シリーズ「生物ロボット最前線」vol.2
実用性を重視したロボット製作を展開


 東京工業大学の広瀬茂男教授は生物の生態や機能を活用するバイオメカトロニクスといわれる分野で第一人者として知られている。
 広瀬教授がヘビ型ロボットの開発をはじめたのは71年のこと。「当時、すでに産業用ロボットは開発が進んでおり、日本でも頻繁に製造されるようになってきた。そんな折、従来の精度や速さを追求する機械と違って、アメーバのような柔らかさを持つ、新しいタイプの機械をつくれないかという興味を持つようになった。その典型的な例として、ヘビの動きを研究しようと考えた」そうだ。
 さっそく、広瀬教授はヘビの動きを綿密に観察することからはじめた。「当時は生物学的にも、足がないのにどうしてヘビは動けるのかという問題が、解明されていなかった。だから、ヘビの生態的な観察から研究をスタートした」と。
 こうして広瀬教授はヘビの動きを研究し、複数のユニットで構成したヘビ型ロボットを考案、72年12月には、世界で初めて実際のヘビと同じ蛇行運動の原理で動くロボットの開発に成功したという。このヘビ型ロボットは全長2mで、20の節から成り立っており、40cm/秒程度の速度で進むことができるという。各ユニットに付いている車輪には動力を使わず、関節を左右に動かすだけで、ヘビと同じように動くというからオドロキだ。
 このヘビ型ロボットの研究は、現在も継続して行われている。たとえば、災害の現場で使用することができるヘビ型ロボットの開発もそのひとつ。「ヘビの動きの特性は、狭い空間にも入り込むことができること。地震で倒壊した建物の隙間にも入り込んで、人命救助活動にあたることができる。また、地雷撤去作業などでも力を発揮するはずだ」と広瀬教授。
 その研究の成果として広瀬教授は「蒼龍5号機」を開発した。このロボットは、全面がクローラー構造になっており、進行中に障害物に乗り上げてしまっても、その障害物を乗り越えてスムーズに進むことができるという。また、操作性にも特徴があり、前面にカメラを設置することで、カメラで捉えた映像を見ながら、遠隔操作することができるようになっている。
 また、広瀬教授はヘビだけでなく、クモの足の動きにも注目。こちらの研究は76年からはじめている。「当初はクモと同じ8本足の歩行ロボットを想定したが、研究を進めるうちに、4本足がもっとも静かで安定した動きを実現できることがわかった」という。実際、広瀬教授が開発した「タイタン」というロボットの足は4本、クモのような歩き方で、障害物を避けながら歩くことができるという。
 現在、タイタンについては産学連携で開発を進めており、12号機を現在製造中という。ちなみに、11号機は重さ7t、高さ3mという巨大なロボットだったという。では、企業側はタイタンがどのような場面で活躍することを望んでいるのか。
 「ワイヤの牽引と組み合わせれば、歩行型ロボットは凹凸のある急斜面でも、カンタンに登っていくことができる。しかも、足が4本もあるので、止まって作業するときの姿勢を自由に変えられる」と。なるほど、たしかにタイタンがあれば、建設業者の作業効率は格段にアップしそうである。
 まさに、バイオメカトロニクスのトップランナー。40種以上のプロジェクトを抱える広瀬教授だけに、これからどんなユニークな開発が飛び出すか、非常に楽しみだ。





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