市民が自分たちで資金を集め、社会や暮らしを良くするために使っていこう―。そんな「市民金融」が今、脚光を浴びている。銀行の融資が企業としての利益を最優先するのに対して、市民金融は福祉や教育、まちづくりなど「生活者」「社会的弱者」の立場に立って、融資先を選ぶのが特徴となっている。さっそく、その現状を取材してみた。
市民金融は「金融NPO」「市民バンク」とも呼ばれている。上智大学教授で、市民金融に詳しい藤井良広氏によれば、こうした金融について「必要なところに必要なだけのお金が流れないならば、自分たちの力で、自分たちの意志で必要なお金を集め、必要なところに回そうではないか」という運動のことを指すそうだ。
日本で市民金融が設立されるようになったのは90年代半ばのこと。94年に設立した「未来バンク」(東京都江戸川区)にはじまり、神奈川、北海道、長野、新潟、愛知県などでも設立された。
その背景について、東京都を中心に活動している市民金融「東京コミュニティパワーバンク」(東京都新宿区、略称:東京CPB)理事長の坪井眞里氏は「銀行や郵便局が預金の使途先を預金者に知らさせることはありませんが、利益を優先した融資を行っているのは明らかです。そのため、女性の起業支援、多重債務者支援など収益性の見込めないところには融資をしてくれません。そこで、何とかして市民の生活に必要なところにお金を融資したい」ということで、この種のバンクが誕生したという。
ところで、この「東京CPB」は、約20年前に主婦たちの活動から生まれたもの。坪井氏は「私たちは生協運動を通じて、主婦たちに『安心・安全』な商品の購入をすすめ、暮らしを良くしていこうという活動を行ってきました。また『ワーカーズコレクティブ』(労働者生産協同組合)を組織し、無農薬のパンや健康食品の店を製造したり、販売したりしてきました」と話す。
しかし、その運営は厳しいものがあったそうだ。「グループのメンバーが銀行に融資を申し込んだところ、女性名義では融資できないといわれたのです。ほかにも屈辱的な思いをしたことは度々ありました。人、モノ、スキルがあっても、融資を受けられなくては事業を継続することはできない、そのことを思い知らされました」と。
こういった経験が市民金融を設立する原動力になったそうだ。03年には坪井氏をはじめ、議員経験者、福祉専門家、まちづくり専門家、金融機関勤務経験者などが創立メンバーとなって、東京CPBを設立したのだ。
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