ロケット製造を支える匠のワザ


 ヘラ絞りとは、ヘラを当てながらアルミやステンレスの金属板を回転させることで、陶器のように成形する技術のこと。この技術を使えば、複雑な形状をひとつの工程で加工できるので、大幅なコストカットになるという。(株)ナガセ(東京都武蔵村山市)は昭和20年に創業して以来、このヘラ絞りを得意としてきたモノづくり系企業だ。現在、社長を務めるのは2代目の長瀬広紀さん。ナント、この長瀬社長は薬剤師の資格を持っており、かつては薬の営業マンをしていたという。「父は私を含め、子どもたち全員に資格を取得させた。時代が大きく変わることを予測していた」と。
 そのため、同社はモノづくり系企業にしては珍しく、営業に力を入れている。たとえば「自分たちだけではできない仕事でも、周囲のネットワークを活用して信頼できる外注先に出すようにしている。とにかく仕事を取ることが大切だ」と長瀬社長。この営業魂が同社の成長を加速させた。85年、取引先の半導体メーカーが急浮上すると同時に、同社の売上げも右肩上がりに。それにともない、ヘラ絞り以外の加工の依頼が舞い込むようになったという。そこで、長瀬社長は思い切って設備投資を繰り返し、レーザー加工、溶接、組み立てと、仕事の幅を広げることに。
 こうした努力が実を結び、今やロケットや人工衛星のパーツを受注したり、一貫生産を任されたりすることもあるという。「受注の入り口はヘラ絞り。それからしだいに受注の幅が広がってきた」と長瀬社長。
 もちろん、技術力にも定評がある。「最近はヘラ絞りにも0.1mmの薄さを求められるようになってきたが、ウチなら対応できる自信がある」と。一方、モノづくり業界全体で職人の減少、高齢化といった問題が深刻化している。が、同社の場合は心配ナシ。18歳と20代の若手がはやくも技術を後継しているそうだ。「懸命になって探せば、モノづくりが好きな若者はたくさんいる」と。そんな長瀬社長には夢がある。「会社とは社会的な存在だ。だからこそ、カンタンにノレンを下ろすわけにはいかない。なんとしても100年企業を目指したい」と。





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