急速に進む少子高齢化、とどまらない原油高、中小企業を取り巻く環境はきわめてきびしい。と同時に、会計事務所も危機に直面している。このような状況で、日本M&Aセンターの分林保弘社長は「M&Aが中小企業を救う原動力になる」という。さっそく、昨年11月に開催されたミロク会計人会連合会の第32回「全国統一研修会・東京大会」の講演会でお話しいただいた内容をお伝えしたい。以下、講演会での分林氏の発言。
中小企業が抱える最大の問題は事業承継です。現在、中小企業の社長の平均年齢は57歳です。10年経つと、67歳になってしまいます。67歳ともなると、体力、精神力、根気がなくなってきますし、今まで通り働くのはむずかしいと思います。ですから、私はハッキリいって、65歳を超えたら社長は会社を辞めるべきだと思います。
それに、出生率は年々、減少傾向にあります。中小企業白書によると、現在、日本の中小企業のうち、半分は後継者がいない状態だそうです。これは実に大変なことです。また、息子さんが家業を継ぎたくないと思っているケースも増えています。大手企業に就職したり、医者になったりした人は家業を継ぎたがらないはずです。そもそも父親の好きなことと子どもが好きなことは違っていて当たり前ですから、やったこともなければ、好きでもない仕事を継ぐのはむずかしいでしょう。だから、私は後継者がよほどの覚悟を持っていないかぎり、子どもに事業承継を行うべきではないと考えています。むしろ、後継者がみずから起業して、父親の会社を吸収合併するくらいの意気込みがないとダメだと思います。
ところで、多くの人は新聞紙面で大企業の合併ばかりを見聞きしているので、M&Aといえばリストラをともなうと思いがちですが、中小企業の場合はその逆がほとんどです。M&Aにおいて、社員の継続雇用は当たり前のことです。買収された後の企業の社員に、野村経済研究所がアンケートをとったところ、社員の7割がM&Aの結果を良かったと思っているそうです。が、一方でM&Aを経験していない人たちの7割がM&Aに反対しています。事業を一から立ち上げるのは、非常に大変なことです。新規事業の場合、ノウハウもなければ、マーケットに対するカンも働きません。そのためにも、M&Aが重要になってくるのです。M&Aが成功すれば、合併後の売上げ、利益を読むことができます。売り手にとっても、社員にとってもプラスになる可能性が高いのです。
私が担当した案件に名古屋のある酒卸業者のM&Aがあります。その会社の従業員は200名程度で年商200億円程度でした。が、社長はその規模では3年後に生き残れるかどうかはわからないと判断し、会社を売却する決意をしたのです。非常に賢い選択だったと思います。そして、社長はM&A終了後、息子さんをアメリカの大学院に行かせ、MBAを取得させることにしたのです。そして、譲渡代金でほかの会社を買収して、息子さんをその会社の社長にしようと考えたのです。その作戦は見事に成功しました。息子さんは貿易業の会社を買って、ハッピーな生活を過ごしています。
また、京都にある日本電産は20年前には聞いたことがない会社でしたが、いまや従業員8万人という世界的な大企業になっています。モーター類の製造・販売に特化し、つぎつぎとM&Aを成功させていったからです。買収した会社が約30社になります。そして、ひとりもリストラすることなく、大企業へと成長を遂げたのです。
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