弊誌が呼びかけた「人工衛星プロジェクト」にいち早く埼玉県秩父地域の商工会のメンバーが反応。さっそく「人工衛星を打ち上げる会」を立ち上げ、1月20日(土)には、人工衛星研究の第一人者である東京大学大学院航空宇宙工学専攻の中須賀真一教授を地元に招き、講演会(主催は西秩父商工会、西秩父商工会工業部会、秩父人工衛星を打ち上げる会、後援は小鹿野町、小鹿野町教育委員会、東方通信社)を埼玉県小鹿野文化センターにて開催した。
当日の朝日新聞・埼玉版には講演会開催のニュースが掲載され、地元の期待の大きさがうかがえた。
講演会の冒頭では、西秩父商工会工業部会会長の垣堺正男氏(垣堺精機社長)が、ここに至るまでの経緯を観客に説明。弊誌06年2月号に掲載された中須賀教授の記事を読んで「空き缶大の人工衛星がつくれることにビックリした。これなら自分たちでもできそうだ」と思ったと。その後、みんなに呼びかけてここまでの動きになったことを説明した。次いで弊誌編集長の古川猛が「宇宙ビジネスは新しい領域だからこそ産学連携が必須。地元中小企業の積極参加に期待したい」と挨拶した。
そして中須賀教授は「超小型人工衛星」をテーマに講演を開始。しばらく話してから、99年以来取り組んできたジュース缶サイズ(350_g)の人工衛星「缶サット」を取り出して見せたときは、会場からオドロキの声があがった。それもそのはず、人工衛星といえば、放送、気象、地球観測向けいずれも数十億円のコストと期間5〜7年を要する国家的プロジェクトというイメージが強いだけに、あまりの小ささと身近さに「シンジラレナイ」といった感じだった。さらには打上げに成功した10ab角の超小型衛星「キューブサット」について説明し、現在も元気に地球上空から貴重なデータを送ってくれていることを話した。
教授は講演のなかで「人工衛星は高度1万bから地球を立体的に観測できるが、その最大のメリットをまだ十分活かしきれていない。今後は大学だけでなく、企業からもいろいろなアイデアが出てくることを期待したい」と秩父の活動にエールを送った。
実際のところ、キューブサットの打ち上げにかかったコストは数千万円前後で、期間は2〜3年。中小企業でもがんばれば打ち上げられる可能性がある。中須賀教授はこうした小型化のメリットを明確にした上で、一般企業の参入分野を観測機器をはじめとするミッション系、熱制御、姿勢制御、通信、データ処理などのバス系に分類。さらに各種災害、緊急時の24時間監視などの幅広い用途を紹介した。
その一方で「本当に必要な技術は、1社しかできないような匠のワザ≠ナはないんです。基礎的な設計図を描き、それを構築できる技術です。人工衛星づくりは実は地味で儲からないということを念頭において取り組んでいった方がいいでしょう」とアドバイスした。そして最後に「秩父には、100年以上の伝統を持つ農民ロケット龍勢≠ェあります。これに『缶サット』を搭載して打上げ実験したらオモシロイですよね。ぜひ実現してください」と結んだ。この言葉に地元の観客たちは、大いに盛り上がった。
翌日、埼玉新聞がこの講演会を第1面で大きく報道。地域経済活性化の起爆剤として期待が大きいことが伝わった。
とはいっても人工衛星づくりは時間がかかるもの。東大でも3年を費やしている。中小企業が本業を行いながら製作していけば、完成は5年〜10年はかかってしまう。また秩父地域の中小企業だけでは、技術集積も足りない。
そこで弊誌では、全国から人工衛星づくりに興味ある企業や団体を募集することにした。この秩父地域をモデル地区とし、各都市で同様の「打ち上げる会」を発足。各地の「打ち上げる会」をネットワークし、ノウハウを提供しあったり、「打上げ・落下競技会」、子どもを主役にした「宇宙懇談会」といった関連イベントを開催していきたい。また、こうした活動内容は随時弊誌で取り上げていく。参加希望者が集まれば各地で説明会を実施する予定。興味ある方はぜひご一報ください。
問合せ 「人工衛星を打ち上げる会」事務局
担当:滝口亮
03-3518-8844
FAX03-3518-845
ryot@tohopress.com
(コロンブス2月号 30頁より) |