シリーズ「ニッポンの農業を変える“草の根活動”」vol.3
“ボラバイト”で就農者の増加を促進

 農業の担い手不足の問題を考える上で注目したい動きがある。それは東京都杉並区の(株)サンカネットワークが実施しているボラバイトというシステムだ。
 同社の代表を務める山本和司さんは元レコード会社勤務。その頃から「最近の若者は元気がないと感じていた」という。そして、「若者たちに元気になってもらうためにも、朝早く起きて、キチンと食事を摂り、汗を流して働いてみてほしいと思うようになった」そうだ。
 こうして山本さんは一念発起して同社を設立。農家で若者がアルバイトできるような仕組みづくりを考えはじめたという。
 「アルバイトの募集や告知についてはホームページで行えるが、都会から農家がある地域までの交通費を農家が負担するのはむずかしい。そこで、労働については対価を支払ってもらうが、交通費については自己負担してもらう『ボラバイト』(ボランティア+アルバイト)というシステムを考えた」と。
 とはいえ、当初は農家に協力してもらうのにも苦労した。たとえば、山本さんはボラバイトに協力してくれる農家を募るために、全国のJA支部にFAXを流したが、その反応にはガッカリしたそうだ。が、これしきで山本さんは諦めなかった。つぎにホームページを開設している農家に問い合わせて、ボラバイトの主旨を丁ねいに説明していったのだ。
 こうした努力が奏功し、現在は6500軒ものネットワークを構築。そのうち農家は3100軒、酪農家は1200軒、宿泊施設は1500軒、その他が700軒となっている。また、これまでにボラバイトを行ったボラバイターの数は延べ1万8000人にも上るという。参加者の年齢層は18〜22歳の大学生・専門学校生がもっとも多く、次いで23〜40歳の社会人(フリーター・ニート含む)となっている。そのほか「最近、就農を目指してボラバイトを行う人たちが増えている。しかも、若者だけでなく、団塊世代やリストラにあった40〜50代の人たちまでさまざまな人たちがアクセスしてくる」そうだ。
 では、参加者はどのような感想を持っているのか。実際に、ボラバイトを経験した石鍋健太さんは早稲田大学大学院に通う学生。「旅行先などで見る田園風景に憧れを抱いていた。それに、農作業の様子にも興味があった」と。そして、大学の休みを利用して、ボラバイトを行うことに。
 「毎日午前4時起きで、早朝から昼頃までは出荷の準備で大忙しだった。夕方になると少し落ち着いたが、それでも夕飯まではさまざまな仕事をこなした。そのため、就寝するのはだいたい夜9時以降、チョット夜更かしすると、睡眠不足になってしまった」という。
 一見するとハードな生活だが、働いているうちに体調はドンドン良くなっていったそうだ。「毎日のおいしい食事と規則正しい生活が良かったのではないか。どうしても生活リズムが乱れがちな都会暮らしに比べて、格段に健康的な暮らしだった」と。そして何より「農家の人たちと一緒に汗を流して働くことで生き生きとした気持ちになった。それに農家の人たちがやさしくて、帰るときは思わず泣いてしまった」とも。どうやら山本さんのネライは見事に成功しているようだ。
 また、最近ではボラバイトが縁で、その土地に就農する人たちも増えているという。「農業をしたくても、地域に馴染めなかった」という声が多いなか、ボラバイトを通じてコミュニティに参加することは実に有意義といえる。新しい就農の窓口として今後も要注目である。





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