奈良で生まれた配置薬産業のふるさと≠ェオモシロイ

 日本における「薬のまち」といえば、「薬売り」で知られる富山が有名。が、薬の歴史に関していえば、もっとも古いのは奈良県だ。奈良県中部の高取町には、西暦612年の薬に関する記録が残っている。当時、高取周辺には薬に使える植物が豊富にあったことから、推古天皇は聖徳太子を連れて「薬猟」(ルビ:くすりがり)を行ったという。その後、江戸時代になると高取でも配置薬のビジネスが始まる。大和の薬売り≠ヘ越中富山のそれに継ぐ規模で、奈良の薬産業を発展させた。
 「奈良には寺社仏閣がたくさんありますが、高取から吉野にかけては薬と深い関係を持ったところが多い。壺阪寺は眼病に霊験あらたかとして、全国から患者さんがやってきます。寺と薬が深くむすびついているのがこの地域の特徴です」と話すのは、奈良県観光連盟の山田和宏さん。
 大和の薬売りといえば高取にある三光丸。この会社は創業1319年の配置薬メーカー。同社の歴史資料を展示した資料館には、行商人が担いだ柳行李や全国の得意先などを記した「得意帳」などが展示されている。
 薬はお寺だけでなく酒蔵とも関係が深い。桜井市にある日本最古の神社・大神神社は百薬の長・酒の神さまとして信仰されている。「酒蔵のシンボルである杉玉は、その多くが大神神社で作られています。酒造りに最適の環境がある大宇陀には、かつて多くの酒蔵がありました」と山田さん。
 酒と並んでこの地域の特産になっているのが葛粉。葛粉は葛の根を冷水に漬け、約2カ月間乾燥させたもの。「デンプンのなかでもっとも粒子が細かいので身体に吸収されやすい」そうだ。発汗や解熱作用があるという。吉野葛の老舗「森野吉野葛本舗」では自家薬園で育てた葛だけを使って葛粉を生産している。「民間で薬草園を運営しているのは全国でもここだけ」だそうだ。
 配置薬メーカーを訪ね、霊験あらたかなお寺まで歩けば、心も身体も癒すことができる。大和路の新しい癒しのスポットとして人気を呼びそうだ。





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