月刊『コロンブスは「人工衛星で町おこし」を応援しています。今回は埼玉県秩父での活動をお知らせします。
人工衛星で町おこしをしてみたいという地域は『コロンブス』編集部まで、ご連絡ください。
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 11月号より 
人工衛星の打ち上げを目指し
秩父の経営者たちが東大中須賀研究室を訪問!!


東大で特別セミナー開催
キューブサットの活躍を体験

 10月17日、中須賀真一教授による特別セミナーが東大で実現した。集まったのは、秩父地域のモノづくりの経営者や自治体職員など13名。西秩父商工会工業部会長で垣堺精機社長の垣堺正男氏は「自分たちがつくった人工衛星が地球を毎日まわるなんて夢がありますよね。子どもや孫にも自慢できます」と胸を躍らせていた。
 セミナーは、まず世界の人工衛星の開発状況についての解説から始まった。近年、人工衛星開発はミッションの高度化により、1辺2~以上と巨大化してきている。そのため莫大な予算がかかり、失敗を避けるために新しい技術を投入できず、宇宙開発へ夢を抱く人々の壁になっていると。
 しかし、中須賀教授はアメリカのスタンフォード大学で、学生が空き缶で人工衛星を製作していることを知り「これなら低予算でできるし、仮に失敗しても大きな問題にはならない。むしろ失敗からいろんなことを学べる」と確信し、さっそく350{шハで「缶サット(CanSat)」の製作に取り掛かることにした。そして99年から毎年1回アメリカ・ネバタ州の砂漠で、高度4000~まで打ち上げて落下するという実験を行い、小さくても衛星の様々な機能を詰め込めることを実証した。
 ついで、地球周回軌道への打ち上げを目指して「キューブサット(CubeSat)」という10}~立方、1|、予算わずか数百万円という世界最小の人工衛星を製作。03年6月には1号機(XI4)を05年10月には2号機(XI5)の打ち上げに成功した。このキューブサットの打ち上げに成功したのは、世界で9機しかなく、そのうちの4機を日本(東大2機、東工大2機)が占めている。「こうした小さいものに精密部品を詰め込むのは日本の得意分野なのだ」.と話す。
 そして中須賀教授は、宇宙空間で耐え得る構造を開発することが重要だ、と。つまり真空、放射線、熱、振動環境に耐えられる構造だ。また、太陽電池や長距離通信、GPS機能、地表到達後に移動するローバー機能なども重要だと。
 だから、たとえば中須賀研究室では、低温対策のためにヒーターを搭載したり、高熱対策のために熱を反射する白い塗料を塗っていたりした。なかでも苦労したのは振動対策だったという。ロケットで打ち上げるときには、重力負荷が8倍になるため、普通の設計ではとたんにバラバラになってしまう。軽量化をはかりつつ、頑丈にしていく、その正確な技術が必要になってくると。 
 まさにキューブサットは、さまざまな壁を乗り越えてできた技術の結晶体、そのキューブサットからの電波を聴いてみたいということで教室を移動、コントロール室へ。定刻の11時10分、ちょうどキューブサットが東大の真上の軌道に来るとき、研究室の研究員がデータを降ろすようコマンドを送った。するとキューブサットからはモールス信号で情報が送られてきた。それを素早くデコーダーで数値化してみると、なんとリアルタイムで宇宙の温度やバッテリーの電圧などが表示されたのである。研究員の話しでは「たまには宇宙で撮影した地球の写真なども送ってくるそうだ」。中須賀教授は「このモールス信号のビーコン(通信)音を聞くと、ああ、今日も元気に動いているなと安心します」と話す。
 ところで、このビーコンを世界中のアマチュア無線家が追跡しているそうだ。キャッチしたデータは、もちろんインターネットで即配されてくるという。今後は、この種の衛星とネットを組み合わせて、世界中の気象観測をしてみたいと。
 中須賀教授の夢はズバリ、「どこまで小さい衛星がつくれるか、そして、小型衛星による新しい宇宙開発の道を探る」ことにあると。大きいことはいいことだという時代は終わったのかもしれない。

「龍勢」の伝統を受け
宇宙の夢が秩父で広がる

 こうして、セミナーで大きな収穫を得た秩父の一行はその後、「コロンブスハウス」(弊誌監修のNPO法人ふるさと往来クラブが運営)で昼食をとりながら、今後について話し合った。
 さっそく「精密部品の製造やガラス加工などを手がけてきた自分たちに、はたして人工衛星をつくれるだろうか」といった議論が。それでも一同の顔色は明るかった。西秩父商工会会長の岩 宏氏は「開発に取り組んでいることそのものが秩父の宣伝になると思う。仮に開発が失敗しても、きっと本業のレベル向上につながるでしょう」と。
 すでに秩父市吉田地域では、400年以上も『龍勢』と呼ばれる農民ロケットを打ち上げ、観光としても有名だ。人工衛星関連のイベントもわせてPRすれば、「宇宙開発の町・秩父」として全国区になるのではないか。
 弊誌では、今号から「秩父・人工衛星を打ち上げる会」の活動状況をお伝えしていく。また、他地域でも同様の会を立ち上げ、地域間交流を促進して、技術レベルの向上もはかっていきたい。興味のある方はぜひ事務局に連絡していただきたい。


参考リンク
東大 中須賀研究室
秩父市
小鹿野町


東大が打ち上げているキューブサット

中須賀教授の後ろにあるスピーカーからキューブサットのビーコン音が聞こえてきた

熱心に教授の話を聞く秩父のみなさん

東大工学部前で記念撮影