増加する休耕田、荒廃する山林―。バイオマスエネルギーを活用すれば、こういった問題を改善することができるという。さっそく、次世代エネルギーについて研究している(株)日本みらい計画の吉野和夫氏(取締役 首席研究員)に、バイオマスエネルギーの可能性について聞いてみた。
―吉野さんはバイオマスメタノールについて研究されてきたそうですが、まずはその特徴からお聞かせください。
吉野 バイオマスメタノールは農林業廃材を原料とするクリーンエネルギーです。ただし、木材を原料とする従来の方法では効率が悪く、コストが高くなってしまうため、これまでは主に天然ガスから製造されてきました。ところが、新しいメタノール製造方法の発達により、製造コストを格段に下げることができるようになったのです。
―ということは、バイオエタノールで問題になっているように、トウモロコシの価格が高騰するといった問題とは無縁なのですね。
吉野 その通りです。バイオマスエタノールの原料は基本的にはトウモロコシ、サトウキビ、麦などです。ですから、バイオマスエタノールを大量に製造するためには、こういった原料が大量に必要になるわけです。食糧自給率の低い日本には不向きなエネルギーなのかもしれません。ところが、バイオマスメタノールの場合、廃木材や稲藁などで製造することができるので、食糧競合が起きる心配はありません。
―廃木材や稲藁をバイオマスメタノールの原料とすることで、農家にはどのような変化が生じるのですか。
吉野 00年度における10a当りの日本の米農家の収穫量は全国平均で539kgで、販売した場合の雑収益は13万円です。これから生産コストを差し引いた利益は約4万円になります。稲藁は稲穂と同じくらい収量があるので、10a当り0・5t程度が期待できます。この稲藁をトン当り2万円でバイオマスメタノールの原料として販売することができれば、農家の収益を10a当り1万円ほど上げることができるのです。
また、原料の生産を休耕田で行えば、休耕田の活用にもつながります。食糧自給率が低い日本にとって、休耕田を活用することは急務です。しかも、休耕田の復活には少なくとも4年の歳月が必要です。ならば、休耕田にバイオマスメタノール用の稲などを植えておけばいいのです。そうすれば、緊急時に米などに転作することができるというわけです。
―つぎに、家畜糞尿などのバイオマスの可能性についてお聞かせください。
吉野 法律の改正で家畜糞尿については、処理基準がきびしくなりました。そのため、家畜糞尿のエネルギー化に対するニーズは高まっています。
―すでに、成功事例はあるのですか。
吉野 たとえば、京都府八木町の取り組みがあげられます。八木町は家畜糞尿を処理して、メタンガスを取り出し、それを使って発電できるようなプラントを建設しているのです。つくった電力の一部は電力会社に売電しているそうです。ただし、発電ではなかなか採算をとるのがむずかしいのが現状です。
―発電以外の活用法はあるのですか。
吉野 メタンガスを天然ガスに混入するという動きがすすんでいます。まだ実験段階ですが、成功すればより効率的にエネルギーをつくりだすことができるはずです。
―このようなバイオマスエネルギーを普及するにはどのようなことが必要になりますか。
吉野 現段階では国の補助がないかぎり、バイオマスエネルギーでビジネスをすることはできません。まずは、コミュニティで仕組みをつくっていくことが大切なのです。小さなビジネスの芽ですが、そうしたコミュニティビジネスがバイオマスエネルギーを普及させる原動力になると思います。
※「シリーズ・バイオマスビジネス」は本日で最終稿となります。 |